「ライブ出るの辞めておとなしくしてろ、って言われたよ」
珪甫は吐き出すように告げる。その声には苦々しい響きが滲んだ。
有り得ない。マジで、何やってんのソイツら?!
私が怒鳴り散らそうと息を吸い込んだ時。
ガツッ。
鈍い音が耳に入ってきた。
音のした方を振り向けば、海斗が自分の拳、床に叩きつけていた。冷たい床に。
「………さねぇ……」
低い、低い声を震えさせて何かを呟いた海斗。もう一度拳を振り上げて床に打ち付けようとした。
止めてっ!
そう言う直前。振りおろしたその拳を紅志の大きな手のひらが、受け止めていた。
「っ!紅志、放せ!」
「嫌だ」
「放せよっ!!」
怒声をあげる海斗に対して、紅志は静かにその手をしっかり掴んで放さなかった。
「海斗!」
いきなり紅志が怒鳴りつけた。その瞬間、海斗の肩がビクッと震えたのがわかる。
私も珪甫も、あまりの驚きに口を開けたまま紅志を見つめてた。



