目を伏せたまま、珪甫は私の問いに小さく首を傾げる。

「どうかな。まあ、可能性は高いけど、ね」

「……っ、最っ低。なんなの?!そんなに……そんなことまでして勝って、何になんの?!」

怒りと悔しさで目頭が熱くなる。涙が、こみ上げてくる。





――昨日の夕方、練習帰りに一人で歩いてた珪甫は、人通りの少ない道でいきなり四人の女と一人のガラの悪い男に囲まれた。

いくら珪甫が男でも女四人の力には勝てないし、脇道に引っ張られて、身動きできなくされたあげく、男がナイフを取り出して、珪甫の右手首を傷つけた。

幸い手の甲側だったから太い血管もなく、神経にも届かなかった。

だけど……だけどドラムが叩けない。無理に叩けば何針も縫った傷口は開く。