「音楽の世界ってさ、流行り廃りがすごく激しい。それはわかるよな?」
「うん、わかるよ」
私はジッと紅志の横顔を見つめながら頷く。
「だからさ、プロになる、なんて軽く口に出して、はいそうですか、つってなれるんだったら、誰だって苦労はしない。そこにたどり着くまでにある程度の人気と、スキル、経験……運も必要だろうな」
そこで一度言葉を切って、紅志は息を吸い込んだ。私たちは静かに彼の次の言葉を待ってた。
「それに俺達はまだ始まったばかり。インディーズバンドにもなりきれてないようなアマチュアだ。そんな底辺にいるココから、てっぺん目指してバンドやってく覚悟、あるのか?」
紅志らしい厳しい言葉だった。
「……………」
誰もが無言で、目の前の床を睨みつけていた。
ていうか私らの今の状態って、変じゃね?
スタジオのど真ん中で4人輪になってしゃがみ込んでる図。
なんかの儀式?!
って、そんな阿呆なこと考えてる時じゃないよ私!



