VOICE



「……なに、それ?」

突然真後ろから低い声がした。

「うひゃあっ!?」

振り向けば紅志がまだ火の点いてない煙草をくわえて、背後から私の手元を覗き込んでいた。私の手元にはB5ノートと黒いペン。

「あ、こ、これですか?いやぁ~私達の自己紹介文、だったり」

急に後ろから来ないでよ~!ドキドキするじゃないのさ~!

私は心の声を悟られないように笑顔で自慢げにノートを紅志の目の前にかざす。
それを目を細めながら見た後、彼は一言。

「ていうか……、誰に紹介すんだ?」

「あっ……」

考えてなかった……。





私が海斗と紅志のバンドに仲間入りしてから1週間近く。
私は高校の授業が終わると毎日海斗の家にある、今は彼専用だという「はなれ」に通っていた。

そこは8畳ほどの広さがあって、完全に海斗が私物化しているのかオーディオ機器やらキーボード、ギター、ベース……。

なんだかたくさんのモノが山積みされてた。私はその片隅にあるソファに座って、テーブルにノートを広げ海斗たちを待っていたのだ。

「お、岡崎さん、大学は?」

時計を見れば4時半。
紅志はいつも5時半ごろやって来るのに。

「あぁ、今日は講義が午前しかなくて。今までCDとか楽器とか見てまわってた」

淡々とした口調で答えた紅志は、かぶってた黒の中折れ帽をぬいで、私の座ってるソファの端っこに腰をおろした。

「「………」」

会話、続かない……。