紅志の顔が今までに見たことないくらい、怒りに染まった。
「ふざけんな!俺にとってはすげぇ大事なことなんだよ!お前のその声の悪口や、歌夜の……歌夜のこと、カルい女みたいに言われて。……そんなの黙ってられるかっ!!」
声を震わせて荒々しい口調で言葉を吐き出した紅志。
初めて見た、こんなに大声出して、荒れてる紅志。
海斗に食ってかかるように、胸ぐらを掴んだ彼を私はハラハラしながら見てた。
でも掴まれてる海斗の方は、怒鳴ることなく静かに目の前の紅志を見つめてるだけ。
ちょっと!海斗、なんとか言いなよ!
私は相変わらず心の中で叫ぶ。
どれくらい沈黙してたのか。長いようで短い間の後、襟元を掴まれたままの海斗が、しかたないなぁ~、って感じで脱力するように長い溜め息をついた。
「あ~あ~、全く!」
一瞬でピリピリした空気は吹き飛んだ。私は海斗の軽~い声に目を丸くしていた。
紅志も同じく、え?って顔して目の前で肩をすくめた海斗を見つめてた。
「ほ~んと紅志はさぁ、優しいよなぁ~」
「……は?」
「だってそうだろ?俺達のために敦士とケンカしたんだろ?」
「そ、そうだけど」
「ほら、やっぱり紅志優しいんじゃん!だけどさ……」



