「で?なんで敦士とケンカしたわけ?」
海斗が静かに問い掛けた。声は穏やかだけどそこには諫めるような厳しい響き。
私はその背中を見ながら、海斗が怒ってる、と感じた。
ピリピリしてる、背中が。
「なんでって……あいつ、歌夜やお前のこと悪く言うし……。他にも色々。だから我慢出来なかった」
小さくて低い声で紅志は呟いた。その手のひらがキツく拳を握ってるのを、私は見てた。
震えてる。
「……ばっか野郎だな、紅志」
え?
私は海斗がぼそっと吐き出した台詞に戸惑って、彼に目を向けた。
海斗の言葉に、少しだけ顔を上げた紅志が苦笑いを浮かべた。
その様子を見ながら私は胸が痛むのを感じた。
私の、せいだ。きっとそう。敦士が海斗や紅志をからかったりするの、私みたいな素人がバンドにいるから。
「ごめんなさい!私のっ、私のせいで紅志がケンカして怪我までして……ホントにごめんなさいっ!」



