「で?イイ曲は浮かんだの?」
立ち止まってるのも迷惑だから、と私達は歩き出した。人ごみの流れに逆らわず。
そして隣を見上げて訊いた私に、海斗はしょぼんと頭を落として見せた後でチラリと私に視線を寄越した。
「今の歌夜の呼び掛けで、全部吹っ飛んだ……くすん」
「えっ!?ま、まじで?嘘!やだ、ごめんなさいっ!どど、どうしよう?えっと、えっと……巻き戻しっ!」
あたふたしながら私が言うと、それを指差しながら海斗が噴き出した。
「あははははっ!冗談だって!ははっ、面白い!」
お腹を抱えて笑い出した海斗の顔を私は思いっきり睨んだ。
………ムカつく。
「ていっ!」
ドカッ。
「いってぇ!!いてぇよ歌夜!」
「当たり前!痛くしたんだからっ、もぅ!」
私は海斗の靴を思いっきり踏んづけてやった。
ホントに心配したんだからっ。
私は膨れっ面のまま。



