「歌夜~あんた最近、疲れてるよな?」
昼休みの教室、机に突っ伏したままの私の真上から降ってきた声。
羽田葵だった。
相変わらず爽やかな笑顔で私を見下ろしてる。
「あぁ葵、今日も男前で……」
ゴイン!
「いでっ!!」
「誰が男前じゃ!こんなに可愛いのに!」
拳をかざしながらニッと笑った。
どこがだ?!
そんなツッコミを飲み込んで、私はかる~く頷いた。
「あは、可愛いかわいい、ほ~んと世界一」
「……その返し、つまらん。どうした?バンドでなんかあったのか~?」
「ギクッ」
思わず声を出してしまった。
その瞬間、葵の瞳が獲物を捕らえた猫のようにキラリン、と光った……ような気がした。
しまった!
そう思った時には、もう遅くて。
「今日の放課後、話を聞いてやろうじゃないの!」
ニンマリ顔で言う葵に、私はフルフルと頭を振る。
「い、いいよっ!そんな大したことじゃないし。それに、部活は?部活があるでしょ?!」
「そんなもんは、大切な親友のためだったらフケる!」
当然のごとく宣言した葵を見て、私は降参。こうなるとてこでも動かないんだよなぁ、なんて思いながら苦笑いするしかなかった私だった。
それにしたって、私のコレは悩み事なんだろうか?私は窓の外の初夏の空を見上げ、小さく溜め息をついた。



