「え?なんですか?」
急に改まってなんだろう?
「俺のさ、名前。岡崎さん、じゃなくて。下の名前で呼んでくんない?」
ドキリ。
真っ直ぐ私を見て言う紅志の顔があまりに真剣で、鼓動が跳ね上がった。
「あ……名前、ですか?」
「そう。名前。海斗や珪甫はそうだろ?俺も名前で呼んでくんない?」
優しく微笑んで言う紅志。
そう言われればそうだ。なんで私、今まで紅志のこと……。
「は、はい。じゃあ名前で呼ばせていただきます!」
「それから敬語も、なし」
そう言って人差し指を立てる。
「はいっ!」
多分顔が赤くなってたと思う。ちょうどそれを隠してくれた夕焼けに感謝する。
私が返事すると、紅志は更に笑顔になって私の頭にポンと軽く触れた。
「じゃあな、また練習で」
「はい、おかざ……じゃない。紅志!」
「そう、それでよし」
軽く片目を閉じ、紅志は片手を振って私に背中を向けた。
その瞬間、彼が何かを呟いた気がしたけど、私には聞こえなかった。
それよりも、彼の名前を口にした瞬間に胸のドキドキが超高速になったことに驚いてたんだ……。



