「わっっ!?な、何?!」
弾かれたように顔を上げた紅志が、驚いた表情で体を仰け反らせる。
「何?!じゃないですって!話があるって言ったのは岡崎さんでしょ?なのにずっと黙り込んで。何の話なんですか?」
私が頬を膨らませながら彼を睨む真似をすると、紅志は小さくごめん、と呟いてから、微かに溜め息を洩らした。
そして、そのまま私の顔をジッと見つめた。
な、ななな、何?!
真剣な眼差しが私を刺すように見てきたから、めちゃくちゃ動揺してしまう。
「………あの、さ」
紅志が形の良い唇を躊躇いがちに開いた。
その表情が、固い。
いつもはクールな紅志が、ぎこちない笑みを浮かべた。
「はっ……なっさけねぇなぁ~、俺。なんでこれくらいのこと…」
「え?」
くしゃり、と頭に手をやった後で、紅志はまた溜め息。
それから口を開いた。
何かを決意したような顔で。
「歌夜は、さ……」



