――カラン。
ウォーターグラスの氷が音を立てた。
スタジオ近くのファミレスで、私と紅志は向かい合って座ってる。
「…………」
「…………」
かれこれ15分、私たちの間には沈黙が流れてる。
どうしよう。これかなり気まずいんですけど。
私は目の前のアイスカフェオレのストローをそっと口にくわえながら、チラリと紅志の顔を覗き見る。
初めて会った時よりも少し伸びた黒い前髪が目にかかりそうだ。
その下にある奥二重の目はさっきからテーブルに置かれたジンジャーエールに向けられたまま。
――カラン。
また、氷が鳴った。
私はそれを機に思い切って口を開いた。
「あの、岡崎さん?話って?」
声を掛けたのに紅志はボーッとドリンクを凝視したまま。
「岡崎さん?」
無反応。
「おっか崎さ~ん?」
まばたきもしない。
「お~か~ざ~き、さ~ん?」
無視か?!無視なのか?!
私は少し腰を浮かして、テーブル越しに紅志に近づき、両手で筒を作って一声。
「紅志!!」



