―――数日後。
「あれ、まだ一人だけ?」
貸しスタジオの重い扉を開くと。
いたのはドラムセットの前でタカタカタカッ、と軽いリズムを叩いている珪甫だけ。
「あぁ、まだ来てないよ」
チラリとこっちに視線を寄越して珪甫はボソッと答えた。
「へぇ、珍しいな……」
海斗はともかく、紅志が遅いなんてなぁ~。
そんな事を思いながら、私はベースのチューニングを始めた。
珪甫がメンバー入りしてから数週間。はっきり言って私は、未だにちゃんと彼と会話をしたことがない。
だって言葉が結構キツいんだよな~。
珪甫は思ったことをそのまま言ってくる。オブラートに包んだやんわりした言い方はしてくれない。
そういう性格なんだろうけど、慣れてない私には正直まだキツかったりする。
いい子なんだろうけどな。
そう思ってこっそり珪甫を観察ようとしたら。
「何?」
おぉっと!バレてるし!



