VOICE



特大パフェをぺろりとたいらげた登は、最後に私に言った。

「歌夜、あんたがバンドを大事だって思ってるんなら、いつも通りのあんたでいればいい」

少しだけ、苦笑いしながら。

「音楽のことだけ、バンドのことだけ考えてたらいいんだよ。他の事なんて、考えんな」

そう言って、ふわふわのスカートを揺らして彼は手を振った。

……っ!!

その時、私は気付いた。

登の手首。

スッと血の気が下がったような気がした。
目の前が暗くなったような錯覚。

なに、今更気付いてんだ、私!?

「登!!」

咄嗟に呼び止めていた。かける言葉なんて、私の中にはないのに。

「なぁにぃ?」

まだなんかあんのぉ?とめんどくさそうに振り返った登はいつもと同じ。

「………っ、あの…」

言葉が出てこない。