――2組目のバンドが終わり、次は私達の出番だった。
そこそこ会場も温まって、雰囲気も悪くないオーディエンス。私はステージの端からそんな様子を覗いてた。
「今日の客はいいな」
背後から低く囁く声に思わずピクッと肩をすくめる。いつの間にか紅志が帽子を目深にかぶり、ギターを持って私の真後ろから頭越しにハコの様子を覗いていた。
「なにがいいんですか?」
「ん?2組目までで客がそこそこ盛り上がってきてるだろ?そのまま俺達の時もついてきてくれそうだってこと」
意外にも丁寧に説明してくれる。
「なるほど」
「これがテンション最低な状態になってたりするとさ、そっから持ち上げてくるのがかなり大変なわけだ」
確かに、と私は頷いた。
気分がしらけちゃった状態からと、ノッてる状態からじゃ最初のつかみが全然違うよね……。
「岡崎さん、今日は頑張りましょうね!打倒BLACK NOISEですよ!」
私が拳を握りしめてみせると、眉をハの字にして苦笑した紅志。
「そうだな」
と頷いてくれた。
と思ったら、急に真顔になった。
―――え?



