「やっぱり?じゃあほっとくわけにはいかないな。はい、キミどいて~」
背の高いお兄さんは、敦士に向かって、シッシッと手のひらをヒラヒラさせた。まるで犬みたいな扱い。
けれど、あくまで穏やかな調子で続ける彼に、敦士は怒り心頭、ガシッと黒いシャツの襟元を掴んで睨みつけた。
「お前、マジうぜぇ」
ドスを効かせた低い声。
うわ、本気で怒ってるみたい。私はハラハラしながら二人の様子を見てることしか出来なかった。
なにこれ?なんなのこの展開?!
「わかんないヤツだね、ウザいのはそっち」
そう微笑みながら告げた彼の顔が一瞬で変わった。
鋭い眼光が敦士を捉えて、襟元を掴んでた手首をグイッと捻った。
ハンパない迫力がある。
「失せろ、ガキが」
ゾクリと震えがくるほどに低くて冷たい声。
「……っつぅ!」
顔をしかめた敦士、すっごく悔しそうな顔をして、その手を振り切って顔を真っ赤に染めた。
何か言い返そうとしたようにも見えたけど、目の前の彼の迫力に負け、口をつぐんでしまう。
そして何も言わずに逃げるようにして立ち去ってしまった。



