VOICE



突然聞こえてきたのは間延びした低い声。

「あぁ!?」

邪魔された敦士の顔が苛だった様子で部屋の入り口に向けられた。

「だからぁ、こんなとこに女の子連れ込むな、っつってんの。俺そういう卑怯なやり方、大っ嫌いなんだよね」

だいたい嫌がってんじゃん、その子。って言いながらその人は近付いてきた。

すらりと背が高くて痩せていた。少し伸びた真っ黒な前髪はそのまま下ろしてあって、不敵に笑う目にかかりそうだ。
口元がニッと笑みを浮かべてた。

「あ……!」

その顔を見た瞬間、私は思わず驚きの声をあげてた。

「ん?あっれぇ、キミ見たことあるなぁ……どこで会ったっけ?」

切れ長の目を少し細めて考えるその人。
私の顔をジッと見つめてきたんだけど、それを遮るように敦士が一歩彼に近付いた。

「なんなんだてめぇ?邪魔なんだよ、さっさと消えろよ」

だけど、睨む敦士をサラリと無視して、彼はあぁっ!と声をあげた。

「わかった!この前スタジオですれ違った子だ?!」

そう。
貸スタジオの廊下で、もう一人の気の強そうなお兄さんと笑い転げてた人!

私はコクコクと大きく頷いて、彼を見つめた。

助けて!って無言のSOSを込めながら。