VOICE



私は両手をポキポキとほぐし、海斗のわき腹へと……。

「……っ、ギャハハハハッ!ヤメッ、ワハハッ!ヒィッ……やめって!」

「まだまだ!やめてたまるかぃっ!」

私はさらに海斗をくすぐった。
海斗はたまらず足をバタバタさせ、体をよじって暴れだした。
その様子が面白くって、私はくすぐるよりも自分が笑い出してしまった。

「おい……。もうリハの時間終わりなんだけど?」

冷たい一声が私達に投げかけられた。

「げっ……」

振り返った私に冷ややかな目線を向ける、ドラマーが腕を組んで仁王立ち。相当頭にきてる。

あぅ……。





小さなライブハウスの控え室、私達はギターやベース、自分たちの少ない機材を片付け一旦外に出ることにした。

「よっ、と」

「歌夜、貸して」

ベースを担いだ私にさりげなく紅志の手が伸びてきて、ベースを持っていかれた。

やっぱり優しいなぁ……!男はこうでなくちゃ!

なんて思いながら紅志の後ろ姿を眺めた私。

相変わらずの上下黒のカジュアルなスーツに細身のネクタイ。
頭には小さな赤いブローチの付いた黒いハットをかぶってた。

かっこいいわぁ。

なんて見惚れながら紅志の後を軽やかな足取りでついて行く私の手が、いきなり誰かに掴まれた。

え?!

そう思った瞬間、細い通路の脇にある狭い部屋に引っ張り込まれてた。

「……なっ!!?」