VOICE



押し黙った私を見て、紅志が小さく笑って言った。

「その時から、俺はギターを触らなくなったんだ。自分勝手にバンドを投げ出した俺に、二度とバンドやる資格なんてない。そう思って」

コツン。
校門に手を掛けた紅志の、指に嵌めたシルバーのリングが冷ややかな音を立てる。

門の両脇にある、街灯に照らされた彼の顔は暗闇の中の学校をジッと見つめてた。
私はそんな紅志の横顔に、話しかけた。

「もう一度ギターを弾く気になったのは、何で?」

聞かなくてもなんとなくその理由が分かるような気も、した。

紅志は、いつもの穏やかな笑みを浮かべて、口を開いた。
と、思ったその瞬間。

「それは俺のおっかげで~すっ!!」

そんな声と共にガサガサっと、門の脇の垣根から人影が飛び出てきた。
誰か、なんて見なくてもわかる。

そこには笑顔の海斗と、むくれた様子の珪甫。

「「…………」」

私と紅志は有り得ないって顔で二人に冷たい視線を送ってやった。

「あれ?なに、驚いてくんないのぉ?」

「俺は嫌だって言ったんだ……」

タイミングがいいのか悪いのか、よくわからない。

ふぅ~っと深い溜め息をついて、紅志が一言。

「……ほんっとにバカヤローだな、お前……」

あ、笑ってる。

てっきり怒り出すかと思ったのに、紅志は仕方ないなって顔で笑ってた。

そして、私に少しだけ顔を寄せて小声で。

「こういう奴だから、ギター弾かずにいようって思ってた自分が馬鹿みたいに思えてきたわけ」

それだけ言って、彼は斗が被ってる自分の黒のハンチングを取り返しに行ってしまった。