VOICE



……やばっ。
泣きそうだ、私。

早足で俯いて歩きながら、私は唇を噛んでた。

ああも真正面からキツいこと言われると……こたえるな。本当のことだけに。

だんだん視界が揺らいで来て、足下が見にくくなってきた。

あ~もぅ!早く家帰って寝よっ!

くしゃくしゃと髪を掻き回した、その刹那。

ガシッ!!

左腕を誰かに掴まれた。

「へっ!?」

驚いて振り向いた私の目に映ったのは。

「おまっ…速い……っ歩くの……」

息を切らして、私の腕を掴んでたのは。

「お、岡崎さん?!」

なんで?!

私は言葉を出せずに、ただ掴まれた腕を見つめてるしか出来なかった。

しかも。こらえてたはずの涙が、じわじわと溢れ出して。

「な……っに、泣いてんだよ、バカっ!」

私の顔を覗き込んだ紅志の顔が、歪んだ。

「ご、ごめ……なさい…」

これじゃ紅志が私を泣かしたみたいだよね。

まともに彼の顔が見れない。泣き顔も、見られたくなくてとりあえず空いてる方の手のひらで顔を隠した。

「あーもーっ!こっちこい!」

紅志は私の腕を掴んだまま、ずんずん歩き出した。
私は目をこすりながらも、つまづきそうな足取りで後をついて行くしかなくて。

……怒ってんのかな?話の途中で帰ったこと。

珍しく帽子をかぶってない紅志の後ろ姿を見ながら、私は思った。

帽子、今日かぶってた、よね?
それも忘れるくらい急いで追っかけてきてくれたのかな?