「知らないのかよ?!結構有名だぜ、毎年アマチュアバンドが出たがるイベントなのに!」
わ!今までで一番長いセリフ?!
勢いに気圧されて思わず身体が後ろに下がってしまった。
「ごめん。私このバンドやり始めるまであまりバンド興味なかったから……」
「マジで?!それでよくこの二人とやろうって気になったな、有り得ねぇ……」
呆れ顔の珪甫を見て私は苦笑いするしかなかった。まあ自分でもそう思うしなぁ、って。
「しかも腕はまだまだだし」
「へへ、ごめん」
ホントだよなぁ。バンドのバの字も知らないような奴だったしな、私……。
「あ。落ち込んでる!おい、珪甫、お前歌夜のこと悪く言うなっつってんじゃん!」
隣で海斗が珪甫を睨むけど、私はその腕を掴んでそれを止めた。
「大丈夫だよ、海斗。平気だから」
「歌夜、ホントか?」
「うん」
私はにっこり笑って見せた。
大丈夫、みんなに心配かけたくない。うん、大丈夫。
私はチラッとお店の時計に目をやって、スッと席を立った。
「ごめん!私帰んなきゃ、あまり遅くなると父さん心配するから、じゃあね!」
「あ、歌夜、送って……」
「いいっ!近くだから大丈夫!」
言いかけた海斗の言葉、乱暴に遮って足早に店を出たあと、私は雑踏に紛れた。



