顔を合わせてしまった私たちは、慌ててプイッとそっぽを向いた。
「もしかして、今の聞いてた、とか?」
私が恐る恐る訊いてみると、海斗はニッと白い歯を覗かせて、ぐっと親指を立てた。
「もっちろん!聞かせていただきました~!いぇい!」
「いぇい!って……ダサッ!」
「ダサい?!なんで!?」
「わからないところが、またダサいよ……」
私はがっくりと肩を落とした。なんだか気が抜けてしまう。
「えぇ~?歌夜なに言ってんの?意味がわかんないよ、俺。ねぇ、登もわかんないよね~?」
突然、話をふられた登だったけど平然と海斗に答えを返した。
「俺は海斗さんがわかりません」
「う」
あ、落ちた。
一瞬で海斗の顔が塀の向こうに消えた。そして。
「いいよ、いいよ、どうせオッサンは今時の高校生にはついていけないんだ……グスン」
「いや、あんたも去年までこの制服着てたんじゃん」
私は塀の向こうにいる海斗に静かにツッコんだ。



