一瞬、声を掛けようか迷う。だけど、そのまま放って帰るのも気が引けるから。
「大丈夫?」
私は少し離れたまま声を掛けた。
でも、俯いた沢口登は黙ったまま返事をしない。
「ねぇ、だいじょ……っ」
パシッ。
そっと差し伸べた手、それを素早く払われた。
驚いて固まった私の視線の先で、顔をパッと上げた登はキツい目つきで私を睨んだ。
「助けてなんて、誰が頼んだんだよ?!」
「な!?なにその言い方!?あんたが虐められてたから助けたんじゃん!」
ムカッとした私、思わず大声を上げてしまった。
「余計なお世話だよ、この出しゃばり女!!」
「なんって奴なのあんた!?てかさ、あんた沢口登でしょ?!いつもライブ見に来てるゴスロリの子でしょ?!」
メイクしてなくてもくりっとした目や、顔つきでわかる。絶対にこの子、沢口登だ。
私のその言葉を聞いて、彼は驚いた表情を見せた。
だけどひるむ様子もなく、いきなりフッと唇を歪めて笑った。



