溺愛されてもわからない!



「あのね、すみれ。
お母さん、佐藤さんと結婚したいの」

目からウロコ
口から心臓

え?えええ?
え?
お母さんが結婚?

私はどうなるの?

軽くパニックになってたら

「佐藤和彦(さとう かずひこ)さんっていう人で、都会で金融業をされてるんだって。もう自分の家に帰らなきゃいけないのだけど、お母さんとすみれを連れて行きたいんですって?どう思う?」

どう思うって?

はぁ?え?ええええ?

お母さんは真剣に私を見る。

「すみれが嫌なら。お母さん結婚しない。和彦さんと別れる」

そう言いながら
目から滝ような涙が流れてるけど

「好きで好きで大好きな人だけど、すみれが反対なら別れるからー」

こらえきれない号泣。

いや卑怯だよそれ!
反対できないじゃん!

心をウロウロさせていたら
安っぽい我が家の玄関に潜んでいたのだろうか
噂の佐藤和彦さんが目の前に現れた。

「椿(つばき)さん!」

怖い顔した例の人が
お母さんの名前を叫んで細い肩を抱く。

「和彦さん!」

お母さんもそれに応え
切ない声を出していた。

なんだこの昼メロ展開。

駆け落ちする男女の仲を裂く娘?

私、悪い人?