溺愛されてもわからない!


その時
玄関の扉が開いて
噂の椿さん登場。

「おかえりすみれ。学校はどうだった?あれ月夜君どうしたの?お姉ちゃんと遊んでたの」

浅いけど大きなダンボールを抱え
お母さんは靴を脱いで月夜君と私に買ってきた荷物を見せる。
色んな食材がいっぱい入ってた。

「都会はスーパーが大きくて迷子になっちゃった。今日は餃子にしようかな。月夜君手伝ってくれる?」

「ギョウザ作れるの?」
不思議そうに聞く仕草が幼稚園児だ。可愛いなぁ。

「得意料理なの。手伝ってくれる?」
優しい声を出してお母さんは月夜に聞くけど
月夜はお母さんの誘いを無視して
バタバタと走り
玄関ホールの横から階段を上がって
自分の部屋に行ってしまった。

お母さんのお供で荷物持ちの組員さん達が『月夜ぼっちゃん』『姐さんすいません』って口々に言ってるけど、お母さんは平然として組員さん達に荷物運びの礼を言いつつ、私の顔を見て「嫌われちゃった」って照れたように笑う。

「学校はどうだった?」

「うん無事行けた。お母さんは大丈夫?」

「何が?」

「なんか……色々」

「えっ?何が?」

本気で聞かれてしまった。

だからいきなり田舎から都会にやって来た不安とか
和彦さんが極道の組長だった話や
エロい義理の息子や
反抗的な幼稚園児や

って色々思うけどお母さんの顔に不安はひとつもない。

天然は極道より強し。