溺愛されてもわからない!


スパーンと壁に大きな音が響き
一瞬で静かになる教室。

鈍く銀色に光るサバイバルナイフは見事に蜂を貫き、壁に垂直に刺さっていた。

ごめんね蜂。許して。
刺されたらこっちも大変だからさ。
心の中で蜂に謝り
「みんな無事でよかったね」って、私は笑ってナイフを壁から取ろうとしたけど

あれ
思ったより高かった。
イスないとダメかも。
ちゃんと持って帰らないと田中さんが心配する。

精一杯背を伸ばしてたら
隣に赤い髪の男の子がやってきて
スッとナイフを壁から外し
かわいそうな蜂の死骸を窓から捨て、カーテンでナイフを拭いてから無言で私にくれた。

「……ありがとう」
顔を上げて礼を言うと
また無言で自分のカバンを持ち

扉の外に消えてしまった。

背が高くて
無口で
愛想がないけど
優しくて

澄んだ目をして
口元がクールで

やっぱり
赤い髪が印象的で
こんな人は初めてで

目が離せない人。