溺愛されてもわからない!


「雫に優しくされて調子こいてんじゃねーよ」

「ほらほら。どーする?トイレの水で顔洗って来ようか?」

「痛い目に合いたくなかったら、この場で言いな『雫さん達には関わりません』ってね」

女子の1人がポケットからシルバーの物を取り出した。

それはシュッという音と共に鋭い刃が出て
目の前で輝く。

これかっ!ここで使うのか田中さんっ!
ナイフ自慢ってヤツなんだね。

私はカバンに手を突っ込み
田中さんに持たされたサバイバルナイフを取り出し
思い出しながら組み立てる。

「スゲーの持ってるコイツ!」
ひとりの男子が叫んだ時
もうひとつの叫び声が教室に響いた。

「なんでー?ちょっと誰か助けて!」

「よせよこっち来るなよバカ!」

田舎の花壇でよく見る大きな蜂が、ブンブンと羽音を鳴らし窓から入って、教室中にパニックが走る。

「助けて!」

「殺虫剤ないのかよ!」

「刺される怖い!」

みんな頭を下げたり逃げ回ったり
大混乱の教室。

私は静かに目で蜂を追い耳を澄ます
そして蜂の道すじを確認。

だいたいパターンがある。

それから深呼吸して
思いっきり目をこらし
精神を集中させて
思いっきり腕を振り上げて
田中さんからもらったサバイバルナイフを後ろの壁に突き刺した。