一夜の投げ捨てるような声が
私の心に突き刺さる。
「ごめん一夜」
「いいよ。ほら行こう」
「……行かない」
「えっ?」
私は彼の背中にそのままの姿で抱きついた。
「すみれちゃん?」
「行かない。どうになかる。本当に帰って来て欲しい時は、きっとお母さんから電話が来るはず」
「でも心配なんだろ?」
「綾夜芽ちゃんも心配だけど、私は一夜も大切で心配。帰ったら一夜を傷付ける。大切な人を傷付けたくないもん」
「すみれちゃん」
一夜はそっと私の手を取り
身体を動かし私を正面から抱きしめた。
「帰らない。一夜と過ごす」
「ありがとう」
ギュッと抱きしめてからのキス。
ベッドサイドの灯りを浴びて
一夜の顔が色っぽい。
「帰ろう」
「え?」
「帰ろう。田中に迎えに来てもらう。あいつならもうこっちに向かってるだろ」
「帰らないよ。泊まる」
「『帰らない』って言うすみれちゃんも好きだけど、『帰る』って言ったすみれちゃんも好きだよ」
「一夜」
「また出直そう」
一夜は鳴り続ける自分の携帯を手にして、私に表示を見せるとやっぱり月夜からの電話。
そのまま月夜からの電話を切ってから
田中さんに電話する。
優しすぎる一夜が
どうしようもないくらい
大好き。



