溺愛されてもわからない!


困っていても誰も助けてくれない。

都会って冷たい。
不安と寂しさで胸が張り裂けそうになる。

頑張らなきゃ!
負けちゃいけない!

私は教科書抜きで何とか午前中を乗り切り、疲れ切ってお弁当を広げた。

雫さんはどこかに行ってしまった。

学校でひとりお弁当を食べるなんて初めてかも。

寂しい。

友達が恋しい
山が恋しい
たぬきもうさぎも恋しい。

個性的な髪の毛の同級生が騒がしい中
お母さんが作ってくれたお弁当を広げる。

お母さんも初めて使う台所で
一生懸命お弁当を作ってくれた。

慣れようとして
お母さんも頑張ってる。

玉子焼きとウィンナー
生姜焼きとポテトサラダ
おかずの数は少ないけれど
愛情はたっぷり入ってるよ。

ありがとうお母さん。

負けるもんかと
「いただきまーす」と手を合わせたら

私の斜め前の女の子が
コソコソっと振り返って私を盗み見る。