「小さなおにぎり作ってあげようか。パンよりご飯の方がいいかな」
お母さんが優しい優しい声を出す。
「俺はいらないのっ!」
幼稚園児はそのままイスから飛び降り
黄色い幼稚園バッグを肩からかけ
また居間のソファにジャンプする。
リアル動物園のサル。
「田中。園に行くぞ」
偉そうに
インターホンで田中さんを、隣の事務所から呼び出してるらしい。
一夜はヤレヤレって顔で無視
和彦さんは立ち上がって『月夜』って怒る一歩手前。
軽い怒りオーラが漂う
自分の子供に軽く怒ってこのオーラなら
この人
本気で怒ったら
どんな感じになるんだろう。
まじ怖い。
でもお母さんは優しい顔を変えず
和彦さんの肩を柔らかい仕草で押さえて
台所から妖怪ウォッチのキャラのランチクロスを手にして、小さなお弁当箱を包み月夜の前に膝を着く。
「月夜君にお弁当を作ったの。持って行ってくれるかな」
優しい声を出して月夜の目をジッと見る。
「いらねー」
「月夜!」
我慢限界の和彦さんを今度は一夜が「まぁまぁ」って軽く抑えた。



