「え?なんで?何で泣くの?」
本気で驚く一夜にこっちが驚くよ。
「どしたの?困ったな」
さっきまでの堂々とした姿はどこへやら
泣かれたのは初めてって顔で、ただひたすら泣く私にオロオロしていた。
「……初めてなのに……」
「は?」
「もうヤダーーー!」
一夜を思いっきり突き飛ばし
私は廊下を走って
階段を転がるように降りて行く。
もうヤダ
絶対ヤダ
こんな家に居たくない!
あんな男に
ファーストキスを奪われたー!
あーん!もう最低!
帰る!田舎に帰る。
「おかーーさーーん」
泣きながら家の中を走ってお母さんを探し
台所でそのような影を見つけて
すがるように走って行こうとしたら
私より先に
和彦さんがお母さんの隣にいた。



