溺愛されてもわからない!


「すみれお姉さんまだ早いよ。まだ6時じゃん」

そう言って
慣れたように私をもう一度抱こうとするので
私はベッドから転がり落ちる勢いで部屋の隅に移動した。

「そんなに引く?」

男の子なのに
どうしてそんなに色っぽい?

「なっ何で私の部屋に?」
声が震えてしまう。

「いや寂しいかなって思って」

「だからって裸で人のベッドで寝るって変でしょう。出て行って下さい」

「ここは俺の家だもん。どこで寝てもいいだろ」

正論だけど正論じゃない!

そしてヤツは引き締まった上半身裸族の腰パンで、私にジリジリと近寄ってきた。

怖い。怖いよ。
オバケより怖いよ。

「仲良くしよう」

綺麗すぎる顔が怖い。

一夜の顔がすぐ目の前に迫ってきて
ふーっって吐息が首筋にかかって
その形のいい唇が
思ったより柔らかいと気付いたのは
自分の唇が彼の唇を受け止めたから。

「ん?」
柔らかそうな茶色い髪
癒される優しそうな目

どんな女の子も

きっと
彼に恋に落ちるだろうけど


私は

私は

声も立てずに
涙をポロポロとその場で流す。