溺愛されてもわからない!


夢君がくしゃみをひとつして「やっぱ寒っ」と、背中を丸めた。私はその仕草でハッと我に返り自分の疑問を心の中の小さな箱に入れた。それはなんだか開けてはいけない箱のイメージがあるので、心の奥にしっかり入れてカギをする。目の前に広がる夢君の笑顔で疑問を閉じ込めよう。

もう大丈夫。自分の気持ちは伝えた。
夢君もわかってくれた。

あとは雫さん。

「一回戻ろうか」
自然に夢君は立ち上がり私の手を握る。

繋いだ手が温かい。

「すみれは俺の彼女でいいんだろ。学校でもそれでいい?」

あらためて聞かれて
彼女ワードにトキメクけれど
私は申し訳なさそうに「うん……でもね……」って言葉をにごす。

「もう少し待って。雫さんの心が落ち着いたら、私からきちんと話をする。ごめん」

今、そんな私と夢君が付き合ってる話なんてしたら、ショック大きいよ。
田舎から来たタヌキちゃんにずっと好きだった人を奪われるなんて、自分に協力するって約束した友達に裏切られた感で人間不信になっちゃう。

「お前、人の事より自分の事を考えろよ」

「わかってる」

「わかってない」

ひどいなぁ。その言い方。
ムッとして夢君の顔を見ようとしたら、ほっぺたにキスされてしまった。

「悪い。可愛くてつい」

顔が真っ赤になってしまう。

「こっ、こんな場所でそんな事しないで」

「別の場所ならいいの?」

「ダメっ!」

焦る私と余裕の夢君。

男らしくて笑顔が優しくて
私の事を大切にしてくれる夢君。

私も大切にしよう。