…気が付いたら、病院にいた。

そばには、手首を包帯で巻かれて
横たわる航希が寝ていた。

「…そうか、ここ…」

と、その時。

親父と、お袋がバタバタと走ってきた。

そういえば、連絡したんだった。

「椿…。航希は?」

「航くん、大丈夫なの?」

「あぁ…とりあえず命に別条はないらしい。」

「良かった…。」

お袋が、へなへなと座り込むのを、
親父が慌てて支える。

「…とりあえず、無事でよかった。
やっぱり、まだ学校復帰は
早かったんじゃないのか?」

「…でも、本人が望んだことだから。」

「けどな、椿。
あの事があって、まだ1年だぞ。
まだまだ、休んでてよかった。
留年は、それは辛いかもしれないけど
心が悲鳴をあげているんだ。
可哀想に…。」

「…。」

俺は何も言い返せなかった。