君のいちばんに

部屋からキッチンへ
そっと忍び足で向かったつもりだった。

「航希。」

呼び止められて、ビクッとなった。

振り返ると、椿がいた。

「…またか。」

「うん…ごめん、起こして。」

「いいよ、慣れっこさ。
何のために部屋を隣にしてもらったんだ?」

「…それもそうだね。」

「どうせ、受験勉強してたし。
起きてはいたよ。」

「…いつになったら、無くなるのかな。」

「さあな、コレばっかりは
気長に向き合うしかないんじゃないか?」

「…椿。僕、なにか悪いことしたかなぁ。
ただ、真っ当に生きてるだけなのに。」

「航希。…おいで。」

手招きをされた。

近づくと、僕は椿に抱きしめられた。

「…いまは、辛いけど
そのうちきっと無くなるから。
…大丈夫、お前はなんにも悪くないの。」

椿は、優しい。

僕は椿に頭を撫でられながら、
身を預けていた。