(航希side)

香帆ちゃんを無事に送り届けたあと、
椿と歩いて帰った。

椿は実は僕の従兄弟で、
訳あって住んでる場所も一緒だ。

「…航希。」

「ん?」

「本当のことは、
まだあの子には言わない方がいい。」

「…言えないよ。言わないし。」

「だよな。…あんな辛いこと。」

「自分でも不思議なくらいだよ。
あれがあって、
今自分がここにいるなんてね。」

「…航希は頑張ってるよ。
だから、俺の前でくらい
楽になったっていいんだぞ。
肩の力抜いて。」

「ありがと、椿。」

僕は笑ったつもりだったけれど、
笑えていたかはよくわからない。