好きなあの人

【緋南side】

「じゃあ、行ってくるねお母さん」

あたしの名前は樋口緋南(ひぐちひな)
は遺影に手を合わせてカバンを持つ。

あたしのお母さんは一年前私の前で車に引かれて亡くなった。

最初は信じられなかったけど今は少し実感してくる。

お父さんも小さい頃に居なくなり今独り暮らし。

「あ、遅刻……」

私は少しのんびりとした性格の為焦りが無い。

「……じゃない!」

高校にはバス通学では無いと行けない。

「やばっ……!」

バス停にバスが止まっている。

「待った、待った、待った…!」

急いでバスに乗り運転手さんに謝る。

「あっぶな……」

「お疲れ〜。」

どこか冷めてるこの子は伊藤千尋(いとうちひろ)中学からの友達。

「汗かいてるだっさ。」

鼻で笑いながら馬鹿にしてくる目。

「お菓子食べる?」

「食べるに決まってるでしょ。」

でも、お菓子で釣られる。

「緋南、あんたいいかげんにしないと怒られるからね。」

実はこれが初めてじゃない。

中学の時もバスが通っていたがそれでも遅刻していた。

それを知っている千尋。

「朝はお母さんに伝えることが多くて……」

「あぁ……。」

静かになりあたしは千尋を見る。

「何で、静かになるの?」

「あんたのせいで、しんみりした。」

「おぉ、ごめん」

千尋はあまり喋らない。

だからいつもポツポツとしか喋らない。

でも、私はそれが心地良い。

「千尋、彼氏さんが居るんだっけ?何年目?」

「何、バカにしてんの?別れたつったでしょ。」

睨みつけられながら言われても慣れてるため「ごめんごめん」としか言わない。

罪悪感とか全く無い。

「ほんと……あんた何なの……」

そう言いつつも笑っている千尋。

中学からのいつもの会話。