いきなり花嫁とか、ふざけんなです。

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もしかしたら、とんでもない頭にされるんじゃ……

なんて心配は、杞憂だったようです。



「さっきも思ったが、すげぇ細くて柔らかい髪だな。」



関心したような声が、背後から聞こえます。

「……どうも。」

まぁ、ストロベリーブロンドの髪の毛は、私の数少ない自慢できる物のひとつですからね。


ソルデさんは毛糸が絡まったような私の髪を、丁寧に丁寧に梳いていきます。

髪の毛をプツンと切ってしまうことなんかなく、一本一本、櫛と手でほどいているようです。

触れる手が優しく、心地いい……。


「……上手ですね。」

「な、言ったろ?手先は器用だって。」


本当ですね。

さっきまで小さな子供のような意地悪をしてきた人と同じには、とても思えません。

もしかすると、私よりも上手かも。

「……ソルデさん。」


「ん?ソルデ、でいいぜ。」


鏡越しに互いの目が合います。

……なんか、いつの間にか打ち解けてしまいましたね。


「じゃあ、ソルデで。あ、私のことは……」

「そういや、お前の名前なんだっけ?」


って!!

連れてきておいて、それですかっ!?

……まぁ、いいです。


「ルルノリアです。」

「ルルノ……長ぇ。チビでいいな?」

「名前を聞いた意味がないじゃないですか!あと、コンプレックスを刺激するの、やめて下さいっ!」

「ははっ、やっぱり面白ぇな、お前。……分かったよ。なんて呼べばいいんだ?」

「……じゃあ、ルルで。」


親しい人は、そう呼びますから。

そう言おうとして。

……ん?親しい人?

そういえば、この人、『魔法使い』じゃないですかっ。

仲良くなっていいんですかね……?


そんな私の心の声なんか知らずに、ソルデさ……ソルデは、会話を続けます。


「分かったぜ。ルル。」

「はい?」

「よろしくな。」


ポンポン。

あ、また頭をポンポンされました。

……ソルデ、私の頭好きですね。


「で?」

「はい?」

「さっき、何が言いたかったんだ?」


器用にも、髪の毛を解きながらソルデは聞いてきます。