思い出せ!大黒柱。

大黒柱の中には示指の強い意思が入っているのじゃ。

それを生かすも殺すも大黒柱次第じゃから。

示指は大黒柱の不注意から切断されたが、そのことを不満に思ったり、グレたりしない、誠実な性格をしていたのう。

今後の大黒柱には大切なことじゃから見習わないとな。

何が人生の中で大切なのかをよ~く考えた方が良い。

今後の人生設計には絶対に必要なことじゃから。

そう言えば、最近は季節も秋から冬に移り、寒くなってきたのう。

そろそろ、あの事故から1年になるが、早いものじゃ。

まだまだ、大黒柱には強くなってもらわないと、この一家のこれからを考えると支えていけるのか心配じゃ。

時間が足りないのう。

わしが、消える時にわしのすべてを込めた光を大黒柱の記憶に浸透させて行こう。

守り神のところには、1ケ月前から更新試験の資格を剥奪する旨の案内が天国から届いていたが、大黒柱には内緒にしていた。

本当に守り神は、やさしい!

このやさしい守り神は、大黒柱一家からいなくなった時のことをすごく心配していたが、大黒柱に強くなってもらう以外には考えられないので、その気持ちだけを伝えようと思っていた。

切断から1年後なので、大黒柱は退院しているし、糖尿病も治っていて、手の包帯も取れ、平和な日常は戻っていた。

いよいよ、守り神が大黒柱の人差し指を守れなかったことで、次の年の更新試験(12月)の受験資格を失った。

守り神の神通力も弱くなってきたので、力を振り絞って、最後の言葉「さ・よ・う・な・ら…、つよく、強くな…」と言って、守り神は消えてしまった。

その時、大黒柱の左手の人差し指に光が飛び込み、大黒柱全体に光が広がった。

全身が白い光に包まれ、徐々に光が浸透したように薄くなっていき、いつもの大黒柱になった。

守り神のことが、大黒柱の気持ちの奥深いところの記憶に刷り込まれ、細胞の単位で守り神のやさしさが体中に入ったのだ。

守り神の広大な大地のようなやさしさを大黒柱が受け継いだ証拠なのだ。

自分自身の不注意から大黒柱一家を支えてきた守り神を天国に返してしまったこと。

今後は、守り神がいないので、大黒柱が強くならないと家族を守る人がいなくなったことも気づく。