大黒柱は、形成外科を退院して、まもなく糖尿病で再入院したので、糖尿病の入院中にも形成外科の外来に来ていた。

形成外科に入院した時の活動範囲の制限も無いので、活動範囲は自由だが血糖値の検査時間だけは病室に戻らないといけない。

逆に言えば、その時間以外はどこに行っても問題は無いのだ。


だから、形成外科の外来に来ているので、受付の看護師とも顔見知りになってしまった。

予約日でなくても、医者に聞いてみましょうと言って、調整診てくれるし、肩からザックリの患者だった人のスケジュールも確認して、合わせてくれる。

半分残った抜糸もそんな時に抜いて貰った。

以前、同室の患者が抜糸は痛いよーっ!と言うので、ものすごく痛いのだろうと思ってしまった。

「どれくらい痛いの?」と聞くと困っているようだった。

だって、指を切断して接合手術を局部麻酔が切れても頑張った大黒柱に、どのように説明しても、さらに痛いと思うような表現は無理だと思ったのだろう。

「手術後の縫合で、抜糸を考えて糸を繋いで、いっぺんに抜糸できるようにするんだ!」と言う。

大黒柱は、それは痛いだろうと思った。

痛いのは、もう勘弁してくれと思いながら、糖尿病患者として入院していた。

病院の中、昼食の前に1階の売店の前を歩いていると、形成外科の医者がこちらに向かって歩いてきた。

「指どう?時間があれば抜糸する?」と言われた。

「時間は大丈夫ですけど」と大黒柱。

「じゃ、今きてくれるう」と言われ、考える間を与えられずに連れて行かれた。

さて、抜糸ですが、残りの半分も肉に挟まって、いっぺんに引っ張って抜糸することは無かったのか、できなかった。

指を固定するために、医者が他の指をギューッと握るので、そちらの痛さで抜糸の方は痛みを感じなかった。

すべての抜糸を済ませると無理した部分は血が滲んでいるが痛みは無いので、消毒して何かの軟膏を塗り、「固定治具もいらないでしょうから、こちらで回収して良いですか?」と医者が言う。

「はい、どうぞ!」と大黒柱が満足げに言う。

「傷口が薄皮ができれば大丈夫ですから、それまで軟膏を塗って包帯をしてください」と医者。

包帯はしても、固定治具が取れただけで、自由度が上がる。