口に入ったままのコロッケを、思い出したかのように急いで飲み込んで、卵焼きに箸を向ける。
けど、…
もし本当に私のことを気にかけてくれたんなら、嬉しい…かな
「あ…」
ふと相島くんとお弁当を食べている成実くんが視界に入る。
(成実くん…楽しそう)
その瞬間、
本当に一瞬なのか、数秒なのかはわからないけど…
私の世界には、成実くんしか写っていなくて。
音も聞こえなくて…
全てがスローで流れているような…
どうしようもなく、
夢中になる
「成実くん…」
「ん?なんか言った?」
梓紗の言葉で、はっと意識を引き戻される。
「え…いやなんでもない」
私、何やってんだろ…
まるで私が私じゃないみたい…
さっきから胸辺りがもやもやするっていうか…落ち着かないし。
どうしてこんなに…
はぁ
考えるのやめよ
どーせ考えたって答えなんて出ないし、今はお腹すいたしね。
ブンブンと頭を横に振る私を見ると、梓紗はなんとも不思議な顔をして
「あんた頭大丈夫?」
「大丈夫!」
そう答えながら、玉子焼きを口に運ぶ。
(数学の答え教えて貰っただけ。そんないつまでも気にすることじゃないんだから)
けど…
「味しない…」
それが作るのを失敗しただけなのか、
それともほかの理由があるのか、
そのときの私には全くわからなかった。


