水族館デートの帰り道、貴方のスマホがポケットから落ちてしまった。


わたしはそれを拾い、貴方に渡そうとした。



――けれど。



落ちた時に電源が入ってしまったのか、貴方のスマホの画面が明るくなっていて。


ふと、その画面に目を向けると。



スマホのロック画面には、わたしにそっくりな人と貴方が笑顔で映っている写真が設定されていた。



誰?、と疑問に思ったのは一瞬だけ。


すぐに、貴方の隣にいる人が誰なのかわかった。



わたしは何事もなかったように、貴方にスマホを渡した。



モヤモヤと胸がざわめいていた。


貴方への深い想いと、写真に映っていた人と貴方の笑顔に抱く名前のない感情に、押しつぶされる。



わたしは、貴方に何も聞くことができなかった。


聞いてしまったら、貴方の優しさを全て否定することになる気がして。