貴方はポケットから何かを取り出し、それをわたしに向けた。
ギラリと光るそれに、わたしは退く。
それ――ナイフを持った貴方が、だんだんとわたしに近づいてくる。
わたしは距離が縮まらないように一歩ずつ下がっていくが、いつの間にか壁の方へと追いやられて、逃げ場を失ってしまった。
鋭く尖った刃が、わたしの喉元を狙う。
どうして?
何かあった?
……そう、貴方に問わないのは。
その理由を、その答えを
心のどこかで、知っていたから。
わたしを見下ろす貴方の視線が、わたしの息の根を止めにかかる。
それでも、わたしは貴方から目を逸らすことはなかった。
泣くことも、怯えることも、助けを求めることもせず。
わたしは、ただただ貴方だけを見つめていた。



