「彼女は、ずっと、泣いていた」
何の音もしない部屋に、貴方のかすれた声が響いた。
ナイフは依然として、わたしに向けられたままだ。
ふと、そういえば、と思い出す。
妹がいなくなって、今日でちょうど1年だ。
「姉のようにはなれない、と。姉のようになりたい、と。姉に助けてと叫びたい、と」
その時、貴方の手が震えていることに気づいた。
ごめん。ごめんね。
こんなことさせて、ごめんなさい。
「でも、そう思っていても姉には何も届かなかった、と」
あの日……妹が死んだ日に、聞いたのだろうか。
やっぱり、妹が最期にわたしに言った『あたしは、貴方のようにはなれない』という言葉の裏に、『助けて』という声が隠れていたんだ。
「どうして、助けなかったんだ」
貴方は、わたしが憎いんだ。恨んでるんだ。
わたしを好きにさせたのも、付き合ったのも、全部全部、今日この日のためなんでしょう?