――妹は、わたしの高校の入学式がある一週間前に、自殺した。
家と中学の中間地点にある橋から、飛び降りたらしい。
橋の下の川に落ちた妹の服は、水と血で濡れていた。
その日、家を出る前に妹は、
『あたしは、貴方のようにはなれない』
と、わたしに苦しそうに言った。
もしかしたら、本当は『助けて』と言いたかったのかもしれない。
親に叱られてばかりでストレスを感じていたのかもしれない。
過ごしていた日々に、嫌気がさしたのかもしれない。
妹がいなくなった今では、全て憶測でしかない。
だけど、あの日見た妹の表情は、確かにわたしに助けを求めているように見えたんだ。
わたしは、何もできなかった。
助けることも、手を差し伸べることも。
鉛のように重く、抱えきれないくらい大きな後悔を、もう二度と消すことはできない。