チャイムを鳴らしてすぐ、扉が開いた。


貴方はわたしの「おじゃまします」の言葉を待たずに、わたしの腕を思い切り強く引っ張る。


わたしの腕を掴む貴方の手のひらは、驚くほど冷たかった。



そのまま強引に、リビングへと連れて行かれた。


カーテンで覆われた窓。電気の点いていない薄暗い部屋。


初めて来た貴方の部屋には必要最低限の物しかなく、殺風景だった。


わたしの腕を掴んでいた貴方の手が、放り投げるように離された拍子に、わたしは床に尻もちをついてしまった。



見上げると、貴方は蔑むような冷たい表情でわたしを見ていた。


いつもの貴方なら、とても柔らかな笑顔を向けて、



「大丈夫?」



と、手を差し伸べてくれるのに。



昨日までとは、貴方の雰囲気が明らかに違っていた。


殺伐とした貴方に、わたしは不思議と恐怖心を感じなかった。