二度目は誠実に

「えっ、谷が適任だなと思っただけなんだけど、なんで怒るの？」


拓人は立ち上がった沙弓を見上げて、何が逆鱗に触れたのかと狼狽する。

沙弓は拓人を見下ろして、大きくため息をついてから、座り直した。


「怒りたくもなりますよ。大石さんが人事部に移ってから、私の業務は増えているんですよ。でも、総務部の仕事だから助け合うのは仕方ないと思っていました。それなのに人事部の仕事までやれとはひどくないですか？」


「でもさ、ほら。課長にしても内田にしても一人立ち出来ているじゃない？ だから、少し余裕があるんじゃないかと思ったんだよ。それに、メインはもちろん総務の仕事で１週間に１日くらい人事に来てくれればいいんだけど。それでも無理かな？」


拓人は沙弓の機嫌をこれ以上損ねることがないよう言葉を選びながら弁解した。沙弓に無理な仕事を押し付けるつもはない。忙しいときはもちろん断ってくれてもいいと思っていた。