二度目は誠実に

「要さんは気になっている子から大嫌い! と言われたらどうしますか?」


食べるのを再開させようとした要は眉間に皺を寄せ、拓人を見る。


「三上さんに大嫌いと言われた? なら、潔く諦めろよ」


「違いますよ。三上さんはそんなこと言いません」


「じゃ、誰なんだよ? まあ、俺なら大嫌いなんて言わせないようにするけどね」


要のアドバイスは役に立たなかった。要に相談すべき内容ではなかった。

拓人は軽く「そうですよねー」と流す。聞いておきながら、流すとは……要がじろりと睨んだが、拓人は気にしないで弁当を食べた。



「あれ? 珍しいじゃん。こんな時間まで残ってたの?」


9時半まで残業をして、エレベーターに乗った拓人は先に乗っていた沙弓に目を丸くしてから、にっこりと笑いかける。


「ちょっと話をしていたら、遅くなってしまったんです」


沙弓の返事は素っ気ない。


「ご飯は食べた?」


「サンドイッチを食べました」


二人を乗せたエレベーターの下降は早く、短い会話のうちに1階に着く。