味を感じられないのは沙弓だけではなかった。拓人も沙弓の考えていることが気になっていて、味わうどころではなかった。

冷静に言っているように見えても内心はハラハラしていた。

二人はせっかくの料理をただ胃に流すだけとなった。胃袋は満たされていくが、心は満たされない、

やっぱり食事はきちんと味わってもらって、今夜1日考えでもらい、明日に返事をしてもらったほうが良かったかな……でも、明日まで悶々と過ごすのは嫌だし……

拓人は自分のお願いのタイミングが悪かったかと考え直したりもしたが、結論はやっぱり今しかないだった。


メイン料理が食べ終わり、残すところはデザートだけとなった。沙弓はナフキンで口の端をそっと拭く。


「どうだった?」


「美味しかったとは思います」


多分美味しい料理だったはず。食べたばかりなのに全然覚えていないが。

プチケーキが三種乗ったプレートとコーヒーが二人の前にそれぞれ置かれる。

どれから食べようかな……沙弓はフォークを手にして、ティラミスから食べるかチョコケーキから食べるか悩んでいた。