二度目は誠実に

いつも前日までには揃えておきたいと課長は言っている。慎重なのはいいことだが、部下に残業させてまでやらせるのは如何なるものか?


「全く……自分勝手なとこがあるからなー。その辺は俺が課長によーく言っておくよ。部下に嫌われないようにしてとね」


「ありがとうございます……」


拓人はいざというときに頼れる男である。上司でも関係なしに意見を言うところを沙弓は尊敬していた。沙弓も見習って、言うべきことは言うようにしているが、まだまだ拓人には敵わない。


「お腹すいたでしょ? どのコースにする?」


「じゃあ、Aコースで」


拓人にメニュー表を渡された沙弓は一瞬で選んだ。決断するのは早いのである。

だからといって、すぐに決断されては困ることもある。考えることも大事だ。


「あのさ、食べながら考えてもらいたいんだけど」


せめてここにいる間だけでも考えてもらいたい。


「何をですか?」


拓人の言いたいことは分かるけど、分からない振りをする。


「本当に俺と付き合わない? 俺は結構本気で付き合いたいと思っているだけど」