「あはは! さすがだね、谷。課長をいじめないで優しくしてあげてと言いたいところだけど、厳しくしたほうが良さそうだから、そんな感じでよろしくね」


そんな感じってどんな感じよ?

沙弓は微かに首を傾げただけで、返事をしないで作っていたグラフの仕上げの微調整に入った。

拓人はパソコンに向かう沙弓の横顔を見て、微笑んで同じようにパソコンに目を向けた。


「大石、ちょっと来てくれないか?」


「あー、はいはい。一件だけメールを送信してから行きますので、先に行ってください」


「じゃ、先に行ってるから」


拓人は新上司となる要にもヒラヒラと手を振り、キーボードを叩く。純太に業務のほとんどは引き継いだので、総務部での業務は雑用くらいしかない。

それよりも新部署での業務が大事で、異動までの残り一週間は両方を行き来する形となる。


「谷。内田が戻ってきたら人事のほうに来るように言っといてくれる?」


「分かりました」


拓人は人事用のファイルを抱えて、総務部を出た。